園長便り2022-20

 「共有型のしつけ」

園長:中村貫太郎

 

新年を迎えてから早いもので2ヶ月が過ぎ、あと2週間ほどで年長児は卒園する時期となりました。年少児も園生活を始めてから1年が過ぎようとしています。皆様のご協力をいただき、無事に年度を締めくくることができそうです。各家庭におかれましても、この1年の関わりの中で成長を喜んだり、しつけに悩んだりと様々なことがあった事と思います。まだまだ子育ては続きますが、その関わりが喜びの多いものとなるよう祈っています。

しつけについては、発達心理学の第一人者でお茶の水女子大学名誉教授の内田伸子先生が、対談で興味深いことを話しておられましたので、その一部をご紹介します。子育てのヒントにしていただければと思います。

 

強制型ではない共有型のしつけこそ、子どもを伸ばすひけつ

大人が子どもに代わって答えを与えると、子どもが考え、工夫し、判断する力を損ねてしまいます。親や保育者は子どもとともに考えるスタンス、さらには、しつけのスタイルも大切です。

私どもの調査では、しつけスタイルと語彙得点に関連があり、語彙得点が高い子は共有型しつけを受けており、強制型しつけのもとでは得点が低くなりました。共有型しつけは、理由をいう洗練コードと呼ばれる提案型の言い方で、靴下をはいたら、その方が足が冷えなくていいんじゃない?など考える余地を与える言葉かけが多く、子どもに合わせて柔軟に援助の仕方を調整します。

共有型しつけが、ほめる・はげます・ひろげるの3Hの言葉で子どもに物事を伝えるのに対し、強制型しつけは、制限コード、禁止や命令です。考える余地のない指示的トップダウン介入が目立つ強制型のしつけでは、子どもはお母さんの顔色を伺うばかりで指示待ち人間をつくることにつながってしまいます。

 

子どもに寄り添い、信じ、3Hの言葉かけを

保護者は子どもに寄り添い、安全基地となってください。子どもはその基地をベースとして自分の世界を広げていきます。他の子とは比べずにその子自身の進歩を見て、ほめてあげて下さい

生き字引のように定理や解説、解答を与えず、禁止や命令ではなく、ほめる・はげます・視野をひろげるの3Hの言葉をかけてあげてください。何よりも大事なのは、子ども自身が考え判断する余地を残してあげることです。

今ある多くの仕事はやがてAIに取って代わられるかもしれませんが、私たちは自分を、そして環境を、未来を担う子どものために変えることができます。

自分で考える力、創造的想像力とともにクリエイティビティ(新たな価値の創造)、ホスピタリティ(他者への共感と配慮)、マネージメント(状況への対応力)といった生きる力が育まれていくように、どうぞお子さんの成長を温かく見守ってあげてください。

(PTAしんぶん 第705号より引用)