園長便り2023-17

「秒速50センチメートル」 

園長:中村貫太郎

 

昨年に引き続き今年の札幌は降雪が少なく、園庭に雪山を作れるか心配していましたが、先週のドカ雪で今年も無事に大きな雪山を作ることができました。これだけ降られると「もう、うんざり」という気持ちになるのですが、状況が変ると「ああ、いいな」と感じることができるので不思議です。例えば冬特有の澄んだ空気と雑音のない中で、風もなく真上から静かに落ちてくる雪を見ると、美しいとさえ思えます。これで露天風呂に入っていたら「ああ、最高」という言葉が漏れ出ることでしょう。

この無風状態で雪が落ちてくる速度がおよそ秒速50㎝だそうです。同じく無風状態で桜の花びらが舞い降りてくる速度もおよそ秒速50㎝。そして蛍が飛ぶ速度も平均秒速50㎝だそうです。いずれも風情のある光景を思い浮かべることができるのではないでしょうか。科学的に解明されている訳ではありませんが、秒速50㎝は心に安らぎを感じさせてくれる速度なのかもしれません。

このような感じる力は、実は子どもの方が優れていると言われています。20年くらい前のことですが初雪が降った日に、幼稚園バスの車窓から外をジーッと眺めている園児がいました。まだ雪が積もる前の黒いアスファルトの上に落ちた白い雪が、風に吹かれて流されていく様子を見てその園児は「雪が走ってる!」と少し興奮気味に言葉にしていました。雪が風に飛ばされるのではなく「雪が走る」という表現は、大人には思いつかない素敵な表現だなと思ったのを今でも覚えています。

 

3学期も園での活動を通して、園児達がどのようなことを感じ、それをどのように表現していくのか楽しみです。