園長便り2023-19

 「子どものまなび」

園長:中村貫太郎

 

慶應義塾大学の中室牧子教授が「音楽や美術、運動は必要なのか?」というタイトルで、興味深いコラムを書かれていましたのでご紹介いたします。子育てをしていく上でのひとつの参考にしていただければと思います。(誌面の関係で一部を要約しています)

 

国語や数学など受験に必要な「主要5教科」の勉強こそが重要で、音楽や美術、運動は「副教科」と呼ぶ習慣が残っていることからしても、オマケと考えている人もいるかもしれません。しかし、音楽や美術は子どもの認知能力と非認知能力の両方を高めることを示した論文が多数発表されており、音楽や美術の経験はとても重要であることが科学的に証明されています。カナダで36週間の音楽レッスンを受けた6歳の子どもたちは、音楽以外のレッスンを受けた子どもよりも35%以上もIQの伸び率が高かった事が分かっています。また小さい頃に楽器や歌のトレーニングを受けた子どもたちは、17歳時点での学力が高かっただけでなく、勤勉性や外向性が高かったことが示されています。定期的に美術館へ行くことの効果を調べた研究は、子どもたちの問題行動が減少し、学校への出席率が高まり、期末試験の成績が向上したと報告されています。また別の研究では、批判的思考力、異なる意見を持つ人々に対する寛容さを高めたことも示されていました。美術や音楽教育を専門にしている共同研究者によれば、絵を描くことや音を奏でることは「意志決定の連続」だということでした。脳科学分野の研究が先行していることからも、おそらく音楽や美術の経験は、脳の活動によい影響を与えるのではないかと考えています。

日本の幼児教育は、日々の生活や遊びを中心とした子どもの主体的、共同的な活動を重視しています。多様な体験や経験こそが認知能力や非認知能力を伸ばすというわけですから、幼少期には、子どもを夢中にさせて、飛び込む機会を与えることがとても大事なのではないかと思います。

作品展に向けての活動も園児たちにとって、そういった機会となるよう願っています。