園長便り2021-12

共存共栄

園長:中村貫太郎

休日の午後に安春川の遊歩道を散歩していると、道端に落ちているパンの切れ端を巡って争っているネコとカラスの姿を目にしました。

ネコが身をかがめてパンを食べようとすると、カラスがぴょんぴょんと跳ねながら近づいてきます。落ち着いてパンを食べられないネコは、うなり声をあげてカラスを威嚇します。するとカラスは庭木に飛び乗り距離を取りますが、そこからジーッとネコの隙を狙っています。

しばらくにらみ合いの時が続きましたが、最終的にネコは大きめのパン切れをひとつくわえて車の下に潜り込み、残りを取りに戻ることなく食べ始めました。

ネコがいなくなった後、カラスは残った小さな切れ端を3つくわえて少し離れた水溜まりまで歩いて持って行くと、パンを水に浸して食べていました。争いはあったものの、お互いに食べ物を分け合うという結果になりました。

生態系ピラミッドが示すように、自然界は弱肉強食の世界であるといわれています。弱い者が強い者の犠牲になる世界です。捕食する側と捕食される側が存在するのは確かですが、今回のように力関係が近い動物同士だと、このような結果が生じることもあるようです。

また、ピラミッドの頂点にいるからといって、その存在が常に安泰という訳でもありません。かつて日本にたくさん生息していたコウノトリやトキは、大型で肉食の水鳥ということで里山の生態系ピラミッドの頂点にいましたが、今では絶滅危惧種となっています。

さて、ネコとカラスのやりとりは、まるで物を取り合う子どものケンカのようにも見えましたが、動物と子どもには大きな違いがあります。子どもは経験を積むことで争うことなく物を分け合ったり、譲り合うことができる様になるという点です。

これは弱肉強食の対義語となっている「共存共栄」というあり方です。互いに助け合い栄えることを意味します。それは弱い者を強い者が助け、守っていく世界です。

そして園訓に「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」とあるように、聖書にも示されている生き方です。子どもたちが園での体験を通して、平和を作り出す者として成長することを願っています。