園長便り2020-17

コントロール

園長:中村貫太郎

3学期が始まり2週間が過ぎました。園庭の雪山は順調に大きくなり1.5m程になりました。また、先週は雪が積もっては溶けるの繰り返しで斜面はツルツルになり、ソリで滑るのには最適な雪山になりました。

園児達は米袋で作ったソリに乗り、楽しそうに雪山を滑っていますが、中には滑ることを怖がる子もいました。上まで来てみたもののなかなか滑り出せなかったり、すぐにブレーキをかけてしまったり、下を見ないように身をひねって滑っていくといった姿がみられました。滑る事への恐怖心は、普段はあまり体験することのないスピードへの恐怖から来るようです。そのスピードを自分でコントロールできるかどうかの判断ができないということも、恐怖を感じる要因の一つになっていたようです。

私自身の体験を思い起こせば、初めて自動車教習所の外に出て、路上教習で時速50㎞を出した時は怖かったことを覚えています。他人が運転する車では何度も体験したことのある速度でしたが、自分で出す時速50㎞はまったく違うものでした。自分の未熟な運転技術で、時速50㎞で走る車をコントロール出来るかどうか分からないという未知に対しての不安が、緊張と恐怖心を引き起こす要因になっていたように思います。

車を運転する時に人間は知覚・認知・判断を連続して行っており、そのときに大脳の前頭葉の部分を使うのだそうです。前頭葉の大部分を占める前頭前野は「考える」「記憶する」「アイデアを出す」「感情をコントロールする」「判断する」「応用する」など、大切な働きを担っています。ですから訓練を繰り返していくことで、車を安全に運転する技術と感覚を自分のものにし、これまで未知だった部分が分かるようになった事で恐怖に対する感情をコントロールし、適切な判断と対応ができるようになっていくのだと思います。ソリで滑っていることを怖がっていた子どもも、何度か滑っている内にスピードにも慣れ、バランスを取るコツをつかみ、楽しむことができるようになっていました。

技術を駆使してスピードを身体的にコントロールすることも、感情をコントロールすることも、何事も自分でコントロールができるようになるということが大切なポイントではないかと思います。特に友達との関わりの中で活動していく園においては、コミュニケーションに欠かせない土台となる感情のコントロールがとても重要になります。園でのいろいろな活動を通して、しっかりと前頭前野を鍛えてもらえればと思います。