園長便り

 ライラックの秘密

園長:村沢秀和

札幌市のシンボルに選ばれている木と言えば、ライラックです。初夏になると札幌の並木道にも、大通り公園にも溢れるほどのライラックが咲き誇ります。紫、ピンク、白・・・色とりどりの花と甘い香りは、多くの人の心を楽しませてくれます。ところで、このライラックの木はもともと日本にあった木ではありません。1890年に一人のアメリカ人女性サラ・クララ・スミスのお庭から持ち運んで植えたのが始まりだと言われています。

サラ・クララ・スミスは宣教師として来日するはずだった兄が突然病死してしまい、その意志を受け継いで日本にやってきた女性です。そしてキリストの愛に基づいた女子教育を目指し、たった一人で小さな塾を始めました。生徒はわずか7名。しかし、しだいにその数は増していき、現在の北星学園になります。

サラ・クララ・スミスは当時の北海道庁長官(知事)も驚き感動するほど献身的に働き、この札幌の地に神の愛を伝えました。 彼女が運んできたライラックは枝分けされ、町のあちらこちらに植えられて行きました。

ところが第二次大戦が勃発すると、ライラックの木は「敵国の木」という理由で次々

に切り倒されてしまうのです。一本残らず切り倒されたかのように見えたライラックの木でしたが、不思議なことに戦後再び増え始め、ついに札幌のシンボルの木になったのでした。戦争の敵意は破壊をもたらしましたが、神の愛をもって植えられたライラックは消えて無くなることなく、かえって力強く復活したのでした。

このライラックの物語は、消えることのない愛の真実を象徴しているかのようです。聖書には「いつまでも残るものは信仰と希望と愛とこの三つである。このうちで最も大いなるものは愛である」(コリントの信徒への手紙一13章 13節)と書かれてあります。愛はこの世界から消えることはありません。どんなに破壊しようとしてもです。なぜなら愛は永遠なる神様のご性質だからだと聖書は教えています。そして、人はこの愛の中で初めて幸せに生きることができるのです。

幼稚園の園庭にもライラックの木が植えられています。もうしばらくすると、きれいな紫色の花を咲かせることでしょう。また、どこかでライラックの花を見かけたら、ぜひこのライラック物語を子どもたちに聞かせてくださり、愛は消えることがない、最も大いなるものであることを話してあげてくださいね。