園長便り

ほめること

園長:村沢秀和

 長女が幼稚園に通っていたときのとある参観日。教師が保護者に対して「お子さんの良いところを教えてください」と、一人ひとりに自分の子どもの長所を、子どもと保護者たちの前で言うように促しました。保護者たちは、何となく照れくさそうに「弟思いのところかなあ」とか、「いつも元気なところですかね」などと答えていく中で、ある保護者の発言に教室の空気が一変してしまったのです。その方は「まず、うちの子の悪いところは・・・」と良いところではなく悪いところの話をし始めたのです。そして、あれもだめ、これもだめと次々に悪いところを上げ、結局良いところを何ひとつ話すことなく終わってしまったのです。

確かに、その方の言われる通りだったのかもしれません。でも、仮に10のうち9悪くても、1つでも良いから良いところを見つけ出し、それをほめてあげると、子どもはそこからエネルギーをもらい成長するものです。

皆さんは、お子さんをほめてあげる言葉と、叱る言葉と、どちらが多いですか?

私たちは誰でも人からほめられたり、感謝されたりしたいと望んでいるものです。ハーバード大学の心理学者であったウィリアム・ジェイムズは、「人間性の最も深い基盤は、人にほめられたいという願いである」と言っています。その欲求の度が過ぎると問題ですが、人は感謝されたり、ほめてもらえたりすると、それはさらなるエネルギーとなってがんばれるものです。これが子どもの場合、思わぬ成長へとつながることも少なくありません。

ヘンリー・ゴッダードという医師が医学的な実験によってこれを証明しました。ヘンリー医師は、筋肉の疲労度を測定する機器を用いて、子どもに「君はよくやってるね」とほめると、そのエネルギー曲線が上昇し、逆に欠点を指摘すると反対の結果になることを証明したのです。

ロングフェローという詩人は「破れた上着は修理できても、荒い言葉は子どもの心に傷を残す」と言っています。この傷は大人になってもなかなか癒されないこともあります。逆に、クリスチャン・ボベックという人は、「子どもを正しくほめることは、草花に降り注ぐ太陽の光ようだ」と表現しました。太陽が花に色とりどりの美しさを与えるように、ほめ言葉は子どもに人生の麗しさ、幸せ、暖かさを感じる心を育みます。叱ることがあって当然良いと思いますが、ほめる言葉はそれ以上でありたいものです。最後にゲーテの言葉を紹介しましょう。

「子どもをほめ、愛するのは、子どもがそれに値するからでなく、そうあってほしいと願うからである」。