園長便り2022-10

 「宮殿の中をなにでいっぱいにするか」

園長:中村貫太郎

インドに伝わる寓話をひとつご紹介します。

 

昔、ある王さまが後継者を選ぶために、3人の王子たちを呼んでこう言いつけました。

「おまえたちの宮殿を1週間以内に何かでいっぱいにしてみよ。ただし、使える費用はコイン1枚だけだ」3人の王子たちは、その無理難題に頭を抱えました。

1週間後、王が王子たちの宮殿を検分する日がやってきました。1番目の王子は、安いワラを買い集めて、宮殿に運び入れていました。でも、ワラは広い宮殿の3分の2までしか埋まっていません。これでは条件をクリアしたことにならず、王は不満顔で次の王子の宮殿に向かいました。

2番目の王子は、町中のゴミをかき集めて宮殿をいっぱいにしていました。宮殿を埋め尽くす事はできましたが、いくら条件を満たしたとはいえ、きらびやかな宮殿を汚いゴミの山にするとは言語道断。王はあまりの強烈な臭いに眉をひそめ、ますます不機嫌になって宮殿を後にしました。

3番目の王子がやったことは少し変わっていました。宮殿にモノを運び込むのではなく、ありとあらゆるモノを運び出し、宮殿内の壁や床をピカピカに磨き上げていたのです。王は夜になって、三番目の王子の宮殿を訪れました。それぞれの部屋や廊下の燭台(しょくだい)に火がともされ、その光がピカピカの壁や床を照らして輝きを放っていました。

王は王子に言いました。「なんという荘厳な美しさだろう。だが王子よ、何かで宮殿をいっぱいにせよと申しつけたはずだ。その約束はいったいどうなったのじゃ」王子は微笑みながら答えました。「王さま、宮殿内はどこもかしこも灯りで照らし出されています。私は光で宮殿をいっぱいにしたのです」その答えに王は満足し、この三番目の王子を後継者に決めたということです。

聖書の中に「あなたがたは、自分が神の神殿であり、神の霊が自分たちの内に住んでいることを知らないのですか」と書かれている箇所があります。この寓話に出てくる宮殿も私たち自身の体や心だとすると、3番目の王子の行動は非常に優れたものだといえます。内側からまず不要な物(光を遮る物)を取り除き、光を灯した時に心をより輝かせるために内面をピカピカに磨き上げたのでした。お金で買えるワラではなく、悪臭を放つゴミでもなく、光で心を満たすという方法を子どもたちも選んでもらえたらと思います。