園長便り2021-16

「視点を選ぶ」

園長:中村貫太郎

作家のサイモン・シネックさんの動画が話題になっているとお勧めされたので拝見しました。約1分の短い動画の中で彼が語っていた字幕の内容をまとめると、次の様な話になります。

人間の脳は否定形の指示を処理することができません。「ゾウを思い浮かべないで!」と言われても、ゾウの姿を思い浮かべてしまう人がほとんどではないでしょうか。人間の脳は「○○するな」と言われるとむしろ強く意識してしまいます。

例えばスキーでたくさんの木の間を滑っていく場面で、「木に当たらないように」と思うと木ばかり意識してしまい、たくさんの木の間をどうやって進んだらいいか分からなくなります。反対に「通れる道を探して」と言われると通り道が見えてきます。視点次第であなたの人生は変えられるのです。

 

とても前向きなメッセージですが、「脳は否定形を処理できない」ということについては、まだ科学的に証明された論文は発表されていないようです。私は思わずゾウの姿を思い浮かべてしまいましたが、そこには科学的に結論づけられた別の理論があるのだそうです。

また、動画自体も一部を切り抜かれたもので、しかも最後の「人生は変えられる」はかなり意訳されているので、それが本当にサイモンさんの伝えようとしたメッセージの中核なのか定かではありません。ですが、どの視点を選んでイメージしていくかということは大切なポイントだと思います。

 

 廊下を走っている園児に否定形で「廊下をはしらないで」と言った場合、かなりの確率で止まりません。止まらないので次は「はしったらダメ!」と強い口調になります。すると園児の心には「注意された」という思いだけが強く残ります。子どもによってはショックを受けて泣き出す場合があるかもしれません。この状態で廊下を走る危険について説明しても、頭には残りません。

廊下はあるこうね」「一緒にあるいていこう」と言った場合、不思議とほとんどの園児は素直に従います。落ち着いて歩きながら「廊下を走ると柱の陰から出てきた人とぶつかっちゃうからね」と柱を指させば、廊下を走る危険と注意すべきポイントについても理解しやすくなります。

 子どもにやってほしいことや伝えたいことは同じでも、どの視点から言葉をかけるかによって伝わり方も変わっていきます。肯定的な視点で言葉をかけられるよう、心がけていきたいものですね。