園長便り2021-09

守破離(しゅはり)

園長:中村貫太郎

園便り7号で「まず型に入り、型より出でよ」という言葉を少しだけご紹介しましたが、この考え方は剣道の修行における段階を示す「守・破・離」からきています。

 

師の教えを守り、決められた通りの動作を繰り返して基本を習得する段階。

「守」で身につけた基本を自分なりに工夫して、少しずつ基本を破り発展する段階。

師のもとを離れ、新たな技を追求し、自分らしい剣の道を切り開く段階。

私も小学生の頃に少しだけ剣道を習っていた事がありましたが、足さばきに竹刀の構え方や打ち方まで様々な型や動作がありました。

型の練習は基本を習得するためのものですが、ただ真似をすればよいというものではありません。漠然と繰り返して形だけができるようになるのと、型の動きにどのような意味があるのかをイメージしながら繰り返すのとでは、そこから学ぶ内容には大きな差が生じます。

重要なのは小手先の技にとらわれず、型から技の根本を理解しようとすることにあります。ですからその根本を理解する上で、優れた達人の優れた動作を見ることは学びの助けとなります。まさに「百聞は一見にしかず」です。やがてそれが自分の中の基準となっていくのです。

 これを子どもの成長段階に当てはめると、園児達は「守」の段階にいます。生きていくための基本となる生活習慣を身につけることや、集団の中でルールを守って行動する意味を学ぶ時期にいます。ただ形式的に守るのではなく、意味を理解して守ることで心の成長が促されます。

また、師は教師と思われがちですが、この時期の子どもにとって最大の師は親です。「親の背を見て子は育つと」言われるように、子どもたちは家庭で見て覚えた型を幼稚園という小さな社会で実践しています。それぞれ個々に教わったことを、集団の中で安全に活動していくために適応させていくのが幼稚園での学びの一つです。

このようなことを書くと、親の責任は重大だとプレッシャーに感じる方もおられるかもしれませんが、子育ての時期は子どもだけでなく、親も親として成長できる時期でもあります。

生まれながらにして剣の達人がいないように、最初から完璧な親は存在しません。一緒に成長したら良いのです。うまくいかないと悩んだ時は、一人で抱え込まずに相談してみてください。子育てを応援している人や場所は沢山あることを覚えておいていただければと思います。