園長便り2020-12

ルールを守るということ①

園長:中村貫太郎

先月、5年ぶりに運転免許の更新に行きました。講習の中では妨害運転(あおり運転)に対する罰則が創設された事など、今年の6月から施行されているルールを中心に学びました。あおり運転により著しい交通の危険を生じさせた場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金で違反点数は35点、行政処分は免許取消し(欠格期間3年)となりました。酒酔い運転と同じく重い処分となったにもかかわらず、いまだに逮捕者が出ているようです。逮捕された人の言い分は「十分な車間距離を取っていないと感じ、腹が立ったのであおった」「急に割り込まれて危ないと感じ、注意してやろうと思った」など、そのほとんどが自分には全く非はなく、相手の非を指摘するためにやり返したという主張でした。まさに某人気ドラマの名台詞としても有名な「やられたらやりかえす」です。人の心の中にこの精神がある限り、あおり運転が無くなることはないのでしょう。

園において、自分がするべきことが疎かになっても、他の子が出来ていない事を指摘しようとする園児の姿を見ることがあります。これは、コミュニケーション能力が未熟で、相手の状況や気持ちなどの事情にまで考えが及ばないため起こります。そういった場面に遭遇した時、教師は相手の状況や気持ちを代弁し、相手に配慮することを伝えつつ、指摘した園児が本来するべきことに戻れるよう声をかけます。

車の運転もコミュニケーションが少なく、相手の情報を得にくい状態にあるのだそうです。そして、あおり運転のきっかけを作り出す車は確かに存在します。そのような車に遭遇し、指摘したくなった時は、相手の事情を想像してみると良いのかもしれません。「運転技術が未熟な人だったのかもしれない」「交通ルールを一部忘れてしまった人かもしれない」などと考えるだけで、少し相手に優しくなれるのではないでしょうか。交通ルールは道路上の秩序を保つためにあります。秩序が保たれているから私たちは自由に自分で道を選んで目的地に向かうことが出来ます。ルールを守らないことを指摘するために秩序が乱されるのであれば、その行為は正義でも親切でもなく無意味ではないでしょうか。

交通ルールに限らず、「ルールは何のためにあるのか」ということについて、園児たちとも考えていけたらと思います。