園長便り2020-05

オンリーワン

園長:中村貫太郎

スーパーコンピュータの「富岳(ふがく)」が、早さを競う演算能力で世界ランキング1位になったという記事を目にしました。それも4部門で同時に1位になったというのですから驚きです。これは世界でも初めての事だそうです。

「富岳」は理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピュータで、「京(けい)」の後継機にあたります。その名前が表すように富士山(富岳は富士山の異名)の高さのように高い性能を持ち、その裾野の広がりのように広い能力を目指して開発されました。1世代前の「京」が1秒間に1京回の計算ができる計算速度世界一を目指して開発されたことに対して、「富岳」は実用的で役に立ち、汎用性が高く誰もが使えるオンリーワンのスーパーコンピュータを目指したのだそうです。ターゲットにした9つの分野でベストな性能を出すことができるよう努力した結果が、世界一につながったと記事に書かれていました。ちなみにスピードを重視した「京」は、計算速度では世界一になりましたが、特殊なソフトでしか動かせず、汎用性に乏しかったため使用できる分野は限られていたそうです。

幼稚園の日常で、1番になりたがる園児の姿はよくある光景のひとつです。1番になりたいがために走って順番を抜かしたり、ご飯をはやく食べたり、数秒で歯磨きを終えたりとその姿は様々ですが、人間の本能なのか園児の多くは「スピード」で1番になろうとします。確かに「早く着いた人が1番」というのは単純明快で子どもでも判断しやすい基準です。しかし、「富岳」が4部門で評価されたように、1番になる基準はそれだけではありません。「丁寧さ」「正確さ」「美しさ」という基準もあります。園での生活を通して、「スピード」だけが評価の全てではないということを学んでもらえたらと思います。そして、人と比較してナンバーワンになることを生きる目的とするのではなく、多くの人の願いに応えることができる、オンリーワンの存在として成長することを願っています。