園長便り

流れに身をまかせて

園長:村沢秀和

星野富弘さんという事故によって首から下が動かなくなってしまった後、絶望のうちに神様と出会い、救われて、その後、口に絵筆を咥えて美しい絵を描き、そこに詩を添えて、多くの方々を励まし続けておられる方がいます。星野富弘さんは小学生の頃、近くの渡良瀬川に、よく泳ぎに行ったそうです。そんなある日のこと、いつもは穏やかに流れている川が、夜半に降った雨のせいで増水し、いつもよりも勢いを増して流れていました。お兄さんたちはその川の流れを乗り越えて向こうの岸へと泳ぐのですが、小さな富弘さんは怖いので、浅瀬で水遊びをしていました。ところが気がつくと、いつの間にか川の中ほどに居る自分に気がついたのです。その瞬間、あっという間に足を取られてしまい、流されてしまったのです。慌てて岸に戻ろうとしますが、流れが速く、戻ることが出来ません。焦れば焦るほど、逆に押し流されてしまいます。星野富弘さんは、もうだめだ、死ぬと思ったそうです。ところが、その時、ふとあることが頭に浮かんだのです。それは渡良瀬川には深いところもあるけれど、そのほとんどは浅いところばかりだったはずだ、ということでした。だから、もと居た方に戻るのではなく、このまま流されていれば、きっと浅いところへたどり着くはずだと、考えたのです。

そこで星野富弘さんは、流れに逆らうのを止め、逆に流れに身を任せてみたのです。すると、すぐに浅瀬にたどり着き、大事には至らなかったそうです。この経験から星野さんは次のように語っています。

「何もあそこに、戻らなくてもいいじゃないか・・・流されている私に、今できる一番よいことをすればいいんだ。そのころから私は歩けない足と動かない手と向き合って、歯を食いしばりながら一日一日を送るのではなく、むしろ動かない身体から教えられながら生活しようという気持ちになったのです」

わたしたちも同じ様に、自分の力に頼って、頑張って、歯を食いしばりながら生きなくても良いのだ。流れに身をまかせながら、今できる最善のことをしようと思うことができれば、とても気持ちが楽になることでしょう。聖書の言葉をご紹介します。

「心を尽くして主に信頼し、自分の分別には頼らず、常に主を覚えてあなたの道を歩け。そうすれば、主はあなたの道筋をまっすぐにしてくださる」箴言3章5~6節

流れに身をまかせるとは、神様に身をまかせるということです。そうすれば神様は安全な道にいつもあなたを守り、導いてくださいます。