園長便り

 採らなかった四葉のクローバー

園長:村沢秀和

小学1年生の一郎君はとても心の優しい男の子です。一郎君はある日、学校の先生から四つ葉のクローバーのお話を聞きました。四つ葉のクローバーはとても珍しいので、もし見つけることができたら、とても幸せになれるというそんなお話でした。

さて一郎君は家に帰ると、さっそく今日先生から聞いたそのお話をお母さんに一生懸命にお話しました。お母さんはその時は「ふんふん」と聞いていました。その日から一郎君は学校の校庭で一生懸命四つ葉のクローバーを探しました。しかし、なかなか見つかりません。どれも三つ葉ばかりです。「ないなあ。本当に四つ葉のクローバーってあるのかな」、一郎君は少しそんな気持ちになってきました。ところが、ある日ついに四つ葉のクローバーを見つけたのです。一郎君はどんなにうれしかったことでしょう。一郎君はそのことをさっそくお家でおかあさんに伝えたのでした。「お母さん、僕ね、今日学校のお庭で四つ葉のクローバーみつけたんだよ」。お母さんは、四つ葉のクロ-バーの事を前に聞いていましたので「見つけたの、良かったね」 と微笑みました。

ところが、一郎君は続けてこんなことを言ったのです。「でもね、お母さん。僕、四つ葉のクローバー採らなかったんだ」。

お母さんは不思議に思い、「どうして採らなかったの」と尋ねると、思いもよらなかった返事が返ってきたのです。「だって、ぼく今とってもしあわせだから。お母さんもいるし、お友達もたくさんいるし、ぼく今幸せだから。だから、しあわせだと思っていない人に、あの四つ葉のクローバーを採ってもらおうと思って採らなかったんだ」と、そう言ったのです。お母さんは「一郎は、やさしいね」と言って、涙が出てきました。そして、お母さんも、一郎君が心のやさしい子どもに育ってくれて、本当に幸せだと思いました。

人を思いやる優しい心を、小さな子どもから学ばされることがあります。子どもには、他者を優しく思いやる心がもともと宿っているのかもしれません。ところが、大人になると、いつのまにかこの思いやりの心が薄れて、自分のことばかりを優先してしまいがちになります。そんな親の姿を見ていると、子どももだんだん、思いやりの心を忘れて大きくなってしまうことでしょう。気を付けたいものです。