園長便り

 植物に学ぶ愛の形

園長:村沢秀和

 人間が生きるためには酸素が必要です。そのために呼吸をします。人間が1回の呼吸で吸う空気の量は約500 mlで、その中には21%に相当する100 ml程度の酸素が含まれています。この酸素は、息を吐くときに75 ml程度に吐きだされ、25 ml程度が体内に吸収されます。つまり、人間が1回の呼吸をすると、地球上から25mlの酸素が失われるということになります。地球上には60億の人間がいて、毎日呼吸をしています。また、人間だけではなく、動物も呼吸をしています。これらのたくさんの生物の呼吸によって、いったいどれだけの酸素が毎日消費されているのでしょうか。ある専門家によると、すべての生物の吸収を足すと、三千年ぐらいで地球上から酸素がなくなってしまう計算になるそうです。しかし、実際には酸素は無くなりません。酸素がなくならない理由はもちろん、植物が光合成によって地球に酸素を供給しているからです。植物がわたしたちの命を支えるために酸素を毎日供給し続けているということは、考えてみると本当に不思議なことです。

さらに、この植物が人間に供給しているのは酸素だけではないことに気が付かされます。植物は命そのものまでも与えて、人間の命を支えているのです。人間は、食物を食べてエネルギーを得るわけですが、その食物は動物や植物などの生物です。また動物も、別の動物や植物などを食べて生きています。ところで、もしこの地球上に動物しか存在しなかったなら、どうなるのでしょうか。お互いに共食いをして、最後には残った動物が、他に食べるものがなくなって餓死することでしょう。しかし、実際には、地球上には植物が存在しています。植物は、他の生物を食べることなく生きていくことができ、しかも、他の生物に食べられることによって地球上のほぼ全生命を支えているのです。植物は酸素を供給するだけでなく、自らの命をもって他の命を支えているわけです。そう考えると、植物がどれだけわたしたち人間をはじめ多くの生物にとって大切なものかがわかります。

自分の命をもって他の命を支える。これはまるで、聖書が教える究極の愛のようです。自然は、自らの姿を通して、神の愛を人間に伝えようとしているのかもしれません。