園長便り

本来人間は臆病なもの

園長:村沢秀和

眠っているふりをすることを「狸寝入り」と言います。なぜ、狸寝入りというのかご存知ですか。狸という動物はとても臆病な動物で、驚いたりするとショックのあまり一時的に気を失うことがあるのです。それがまるで、相手をだますために寝たふり、死んだふりをしているように見えることから、寝たふりをしていることを狸寝入りというようになったようです。

動物というのは、狸だけでなく基本的にみな臆病なものです。熊のような強い動物でも臆病だと言います。臆病というのは、実は動物に備わった防衛本能でもあります。臆病だからこそ慎重になり、臆病だからこそ身を守るすべを考えて、生存率をあげることになるのです。

この臆病な傾向は、人間も同様です。本来人間は臆病なものです。不安や恐れが常にあります。成功者の多くが自分は臆病だと言います。このような大事業は勇気がなければ決断できるものではないと思うようなことを成し遂げた人でも、逆に臆病だからこそ、いろいろと深く考え、人よりも多くの努力をし、ここまで来ることができたのだと言う人が多いのです。

しかし、臆病だけでは前に進むことはできません。決断すべきときには決断し、前に進むべきときは前に進む勇気も必要です。不安を抱えながらも、自らを鼓舞し、大きな決断を下してきたという人も多いのではないかと思います。

司馬遼太郎は勇気について、こんな言葉を残しています。「勇気は、天性のものではない。臆病者が、自分自身を練り、言い聞かせ、知恵をもって、自らを鼓舞することによって、かろうじて得られるもので、いわば後天的なものである」と。生まれながらに豪傑な人がいるのも確かですが、本来、多くの人間が臆病なもので、それを、自分自身を練り、言い聞かせ、知恵をもって鼓舞して、かろうじて得られるのが勇気なのだという言葉には、多くの人が共鳴するのではないでしょうか。

人間は本来臆病なものです。もし、不安と恐れで押しつぶされそうになったら、イエス様の言葉を思い出すと良いでしょう。イエス様はこう言われます。「恐れるな、わたしはあなたと共にいる」と。