園長便り

幼児教育が人生に与える影響

園長:村沢秀和

「幼児教育が人生に与える影響」について、シカゴ大学の経済学者でノーベル賞受賞者のジェームズ・ヘックマン氏を中心としたチームが、数十年かけてリサーチを行いました。このリサーチでは、まず3歳の子どもを無作為に選び、就学前に質の高い教育を受けさせたグループと、就学前に教育を受けさせなかったグループに分けます。そして、その後彼らを数十年にわたって追跡し、40歳となったときに、両群の比較分析を行ないました。すると、その結果には明らかな違いが見られたのです。

まず、就学前教育を受けた子どもは、受けなかった子どもに比べて、高卒資格を持つ人の割合が20%高く、5回以上の逮捕歴を持つ人の割合が19%低く、離婚率や生活保護等に頼る率も低いことがわかりました。さらに、月収約25万円を超える人の割合、質の高い教育を受けた子どもがそうではない子どもの4倍となり、家を購入した割合も3倍高かったということです。

また、興味深いのは、知能指数に対する影響です。質の高い教育を受けた子どもたちが、知能指数に関しては必ずしも長期的な効果をもたらしたわけではないということです。確かに、最初のうちは一般知能の向上を示しましたが、この傾向は小学2年生までに消失してしまうのです。では、何がその後の人生の違いに影響を与えていったのでしょうか。

このリサーチからわかった最も強い影響を表したのは、さまざまな「非認知的」能力だというのです。非認知的能力とは、例えば自制心や粘り強さ、やる気などの特性のことで、幼児教育はこれらを伸ばすのに効果があったというのです。そして、このリサーチの冒頭には次のような言葉が書かれてあります。

「われわれの社会は「頭の良さ」に価値を置く傾向が強いが、こういった「非認知的」な能力こそが重要である。なぜなら、信頼できる人間性こそ雇用者が最も評価する特性であり、「粘り強さや信頼性、首尾一貫性は、学校の成績を予測する上で最も重要な因子」だからだ」。

幼児教育がすべての教育の始まりであると言われるのは、このような理由からなのでしょう。三育幼稚園での幼児教育が、このような非認知的能力を少しでも伸ばすものであればと願っています。