園長便り

限界をつくらない

園長:村沢秀和

ノミは驚異的なジャンプ力で知られています。ノミの成虫は体長1mmから4mmほどの小さな昆虫ですが、体は左右方向に扁平になっており、髪や毛の間を動きやすいように出来ています。そして、羽はないものの、後ろ脚は非常に発達しており、垂直方向に最大で20cm、水平方向に41cm飛び跳ねることができるのです。これは体長4mmとしてその50倍も垂直に、また100倍も水平に跳ぶことが出来る計算になります。これを人間に置き換えて考えてみると、身長160cmの人間が、垂直に80m、水平に160mも跳べる計算になります。高いビルディングもひとっ跳びということです。
ところが、高さ10cmの箱に入れてふたをし、しばらく放置すると、不思議なことが起きるのです。ノミは10cmの箱の中で跳び続けます。飛ぶ度にふたにぶつかって落ちてしまいます。そのような状態をしばらく続けた後、ふたを取ります。ノミはどうなると思いますか?

1.20cm飛ぶ

2.10cm飛ぶ

3.飛ばなくなる。

答えは2番の10cmです。ノミは箱の中

で10cmしか飛ぶことができないことを学習してしまった結果、それを自分の限界だと思うようになってしまうのです。だから、ふたが取り除かれても、自分にはもう無理だと10cm以上は飛ばなくなってしまうのです。本当は20cm飛ぶことができるのに・・・。

このノミのお話はとても考えさせられます。わたしたちも本当はできるのに、自分で限界を作って諦めてしまうことはないでしょうか。また、子育てにおいても、子どもたちが無理と言うと、簡単に諦めさせてはいないでしょうか。子どもたちはたくさんの可能性を秘めています。だから簡単に諦めるのではなく、子どもたちの可能性を信じて、それを伸ばしてあげられるようにすることが大切です。

以前、アメリカミスユニバースに耳の聞こえない女性が選ばれたことがありました。ダンスを披露するときも、音楽の振動に合わせて見事に踊りました。彼女の母親は小さいときから彼女にこう言ったそうです。「アメリカ人という英語の綴りは、Americanと書いて、最後にican,とあるでしょう、アイ・キャンわたしはできるという意味があるのよ。だから、あなたは耳が聞こえないけど、何でもできるのよ」と。

わたしたちも子どもたちに、できるというメッセージを語り続けたいものです。