園長便り

五輪の輪

園長:村沢秀和

ソチで開かれていた冬季オリンピックが閉幕しました。今回のオリンピックでは88カ国からの参加があり、これは史上最も多くの国からの参加となったそうです。北海道出身の選手も多く活躍していたので、応援に熱が入った方も多かったのではないでしょうか。

さて、オリンピックというとメダルを取るか取らないかばかりがクローズアップされがちですが、それ以外にも多くの感動を与えてくれました。その一つに、クロスカントリー男子スプリント競技で、ロシア代表のアントン・ガファロフ選手がレース中に転倒し、スキー板が折れてしまうというハプニングが起こったときに生まれた感動エピソードが話題になっています。

ガファロフ選手は折れたスキー板で懸命に滑り続けますが何度も転んでしまいます。それでも立ち上がり前に進もうとするうちに、ついにスキー板の先端が砕け散ってしまいます。そのときでした。一人の男性が1本のスキー板を持ってコース内に飛び出し、ガファロフ選手にスキー板を手渡し交換したのです。その男性は、同じチームのコーチではなく、なんと競技では敵チームとなるはずのカナダのコーチでした。

彼は「見ていることができなかった。ロシア代表のガファロフ選手に母国で恥をかかせたくない一心だった」と語っています。

実はこのカナダのコーチの妻が元トリノ五輪のスキー距離女子団体スプリントのチーム員でした。その妻のチームメイトがトリノ決勝戦でストックが折れてしまうという同じようなハプニングが起こったのだそうです。そのとき、なんと決勝戦に出ているノルウェーのコーチがコースに飛び出て、そのカナダの選手に新しいストックを渡したというのです。その結果、カナダは銀メダルを獲得し、ノルウェーは4位となってメダルを逃してしまったのです。メダルにこだわる人ならば有り得ない行動でした。しかし、この出来事はカナダ・ノルウェー両国で話題騒然となり、批判等をするのではなく、このコーチを讃えたのです。そしてカナダからはこのコーチに7400個ものメープルシロップが送られ、ノルウェー国内でもコーチが支援するガン撲滅慈善団体に270万円もの寄付が行われたそうです。今回、カナダのコーチが取った行動の背景には、この自分たちもかつて同じ助けを受けた恩を返すのだという思いもあったようです。五輪マークの輪は他国との輪を表しているといいます。昨年世相を現す漢字としてこの「輪」が選ばれましたが、幼稚園でもこの「輪」を大切にしたいものです。