園長便り

反抗期と成長

園長:村沢秀和

 

一般に子どもは成長していく過程において、二度の反抗期を迎えます。「第一反抗期」(2、3歳~)と、「第二反抗期」(思春期)です。親は反抗期の子どもの態度や言動に悩まされます。まわりも「大変だね」と言ってくれるかもしれません。しかし、本当は「良かったね」と言ってあげるべきなのかもしれません。なぜなら、子供の人格がそれだけ成長している証拠だからです。この時期に目立った反抗もなく通り過ぎて行く子どももいるようですが、そのような子どもは自分の気持ちを吐き出せず、内側にどんどんためこんでしまっているだけかもしれません。

この時期の子供たちの状態を「反抗」と受け取るか、「成長」と受け取るかで、その対応はまったく違ったものになってきます。もしそれが本当に「反抗」であるなら、それを許容してはなりません。しかし、「成長」であるのにそれを「反抗」と受け取ってしまうなら、その子の成長の大切な部分を否定することになりかねません。それが「反抗」なのか「成長」なのかをしっかりと区別することが重要です。

3歳の娘に、お母さんはブランドものの可愛らしいワンピースを買ってきて着せてあげようとしました。いつもなら何でも喜んで着てくれるのですが、そのとき娘はワンピースを嫌がり、ズボンをはきたいと主張したのです。お母さんは娘の反応に驚きました。そして反抗してくる娘の態度に少しいらいらしました。

「せっかく買ったんだから。とてもかわいいから着てごらん。」「いやだ。かわいくない」「かわいいから。」「いやだ。ズボンが良い!」「もう、これ高かったのよ。ブランドものなのよ!」

子どもにブランドを主張したところで意味がないことはわかりつつも、ついつい声を荒らげてしまいました。

さてこの女の子の態度は反抗でしょうか。それとも成長でしょうか。ここで、親自身の子育ての目標が問われてくるのです。もし親の言うことに何でも「ハイ」と言える子供に育てることが目標であるなら、これは「反抗」と受け取られるでしょう。しかし、子供の人格―自分で考え、判断し、選ぶという主体性―を育てることが目標であるなら、これは「成長」として受け取ることができます。この時に親が子供の「ノー」を抑え込んでしまうと、子供は怒りを持ちます。それはやがて親の権威に逆らう本当の反抗につながっていくことでしょう。この時期、本来は人格が成長している喜ばしい時期なのです。それを「反抗期」にしてしまうかどうかは、実は親の対応によるのかもしれません。