園長便り

貧しさの中ではぐくまれる愛

園長:村沢秀和

 

夏休みも無事終わりましたが、お子さんとどのような夏休みを過ごされましたか?夏休みは毎年やってきますが、たとえば4歳のわが子と過ごす夏休みは今年だけで、来年は5歳のわが子と過ごすことになります。1歳違うだけでも、子どもはびっくりするほど成長するものです。親はその子どもの成長に驚いたり、喜んだり、時には戸惑いを感じたりすることもあるでしょう。成長していく子どもに合わせて、親の接し方も変わっていきます。だから今この瞬間のお子さんは今だけなのだと思い、しっかりと抱きしめてあげてほしいと思います。

ある教会にK君という小学校4年生の男の子が来るようになりました。K君は二人の弟の手を引き、背中にはおんぶひもで小さな妹を背負ってやってきました。とても貧しそうな身なりをし、一目で訳ありであることがわかりました。両親は共働きで、3人の小さな兄弟の面倒を見るのはK君の役目のようでした。妹はよく泣きました。教会の大人たちがあやしても一向に泣き止みません。するとK君は「ぼくじゃないとだめなんだ」と言って、背中に上手に乗せ、おんぶひもで縛ります。その手際の良さは驚くほどでした。K君は小さな妹が泣きやむまであやし続けるのでした。

子どものクラスでゲームをやったときのことでした。K君は妹をあやしながら、二人の弟に勝たせてあげようとがんばりましたが、K君本人が勝ってしまいました。景品としてクッキーが一枚あたりました。K君はうれしそうにそのクッキーを手にとり、半分に割りました。割ったクッキーを背中の妹に渡しました。残った半分のクッキーをさらに半分にして、二人の弟にあげました。K君は指についたクッキーの粉をなめるだけでした。

K君は貧しい身なりのために、友達からばかにされました。ただで物をもらえるところに行くとばかにされるのでした。教会の牧師さんはK君を見て、いつも胸が熱くなるのだと言っていました。そして、こう続けるのでした。

「貧しいけれど、なんと心が美しく、優しい子だろう。本当はどんなに同級生と一緒に遊びたいことか。どんなにクッキーを一枚全部一人で食べたかったことか。貧しいといってばかにされるK君。周りがこのK君のやさしい愛を押しつぶそうとする。

豊かさの中に本当の愛ははぐくまれるのだろうか。かえって、貧しさの中にこそ、本当の愛がはぐくまれるのではないだろうか。がんばれK君!」。

 

子どもを見ていると、学ばされることが本当に多くあります。子どもはどんどん成長していきます。それに合わせて、親も子どもと一緒に成長していくものなのかもしれません。