園長便り

 少し休みましょう

園長:村沢秀和

ガン細胞はいったいどれくらいの速さで正常な細胞をがん化していくのかを知るために、ガン細胞と正常な細胞を同じ試験管に入れて実験してみました。すると驚くべき結果が出たのです。なんと一週間後、すべての細胞が正常な細胞になっていたのです。いったい試験管の中で何が起こったのか、この解明こそがガン治療につながると考えられました。

その後の研究でわかってきたことは、遺伝子の中にp53という遺伝子があり、これが大きく関わっているということでした。通常正常な細胞は一定の休息をしながら分裂を繰り返しています。傷んだ細胞が回復されるのは、その器官が休息している時です。ところが、ガン細胞は休息することなく分裂を繰り返し増殖していきます。そのためガン細胞が正常な細胞に回復する機会を得ることができないのです。

そこで、登場するのがこのp53遺伝子です。p53遺伝子は休みを知らないガン細胞を休ませようと働きかけ、傷ついた遺伝子を修復させていくのです。ところが、ガン患者の細胞中にはこのp53遺伝子が極端に少なくなっているのだそうです。それでガン細胞が修復されず、増殖しつづけてしまうのです。

ではなぜp53遺伝子が少なくなっているのかというと、その原因のひとつとして考えられているのが、疲れているのに休息することのない現代人の多忙な生活、過度なストレス、濃厚な食物による消化器官の酷使、思い煩いや不安による精神的な安らぎのなさなどだと言われています。というのは、体は「休みなさい」と指令をだしているのに、わたしたちがその指令を無視して、精神的にも肉体的にも働き続けているので、やがてp53遺伝子は自分の存在意義を見失い、不活性化してしまうのです。

逆に先ほどの試験管の中の実験では、ストレス要因もなく休息指令を退けるわがままな意思もありませんでしたから、p53遺伝子が速やかにガン細胞に働きかけ、見事に正常化させることに成功したと考えられるのです。これはガン細胞だけではなく他の多くの病気にもいえることで、体を休ませ重荷やストレスから解放されるとき、体の回復も早いのは数々の症例が示すところです。

イエス様は弟子たちに「さあ、あなたがただけで人里離れた所へ行って、しばらく休むがよい」と言われたことがありました。この言葉は、今わたしたちにも言われている言葉かもしれません。