園長便り

「もし今日が最後の日なら」 

園長:村沢秀和

アップル社の創設者であるスティーブ・ジョブズ氏は、30年以上に渡って、毎朝鏡に映る自分の姿を見ながら、自分自身にこう問いかけてきたそうです。

「もし、今日が人生最後の日だったら、今日、私がやろうとしていることは本当にやりたいことなのだろうか!?」と。

そして、ジョブズ氏はこう言います。「この問いに対する答えが何日にも渡って連続して”NO”であった場合、それは私にとって何かを変えなければならないということを意味する」と。

「もし、今日が人生最後の日だったら、今日、私がやろうとしていることは本当にやりたいことなのだろうか!?」。このような問いを、わたしたちも自分自身に対して問いかけたことがあるかもしれません。そして、この問いはとても大切な問いであるに違いないと感じたかもしれません。というのは、わたしたちはあまりにも無駄な、あるいは無意味なことに、自分に与えられた限りある大切な時間を費やしていることが多いからです。しかし、それでいながら、本気でそのことをつきつめて考えるのはなかなか難しいの

です。なぜなら、今日が最後の日などということは基本的考えたくはないことだし、現実問題として、そのようなことを想像することが難しいからです。

あるホスピスケアにたずさわっておられる医師が講演会で、「人は二十年かかって生きるための準備をするが、突然訪れる最後の日の為の心の準備は、殆どの人が無関心である。これは特に日本に於いてその傾向が強く、ここで言う無関心とは『覚悟した無関心』ではなく『無防備の無関心』である」と言われていました。「無防備の無関心」。確かにそうかもしれないと思わされます。

ジョブズ氏は若い時にすい臓がんを告知されました。そのときから「今日が人生最後の日だったら」と問いかけるようになったのだそうです。彼はこう言います。

「自分がもうすぐ死ぬ状況を想像することは最も大切な方法です。私は人生で大きな決断をするときに随分と助けられてきました。なぜなら、他人からの期待、自分のプライド、失敗への恐れなど、ほとんど全てのものは、死に直面すれば吹き飛んでしまう程度のもので、そこに残るものだけが本当に大切なことだと気づかされるからです」。

新しい年が始まりました。時間はあっという間に過ぎていきます。与えられた一日、一日を大切に生きるために、「もし今日が最後の日なら」と問いかけてみてはどうでしょう。そのとき残るものこそ、あなたがなすべき本当に大切なものかもしれません。