園長便り

心の中でメリークリスマス

園長:村沢秀和

水野源三さんは瞬きの詩人と言われた方です。水野さんは九歳の時に赤痢にかかり、高熱のせいで脳膜炎を併発して、体の自由をまったく失ってしまいました。口を利くこともできなくなり、水野さんに残されたのは見ることと、聞くことだけでした。子どもながらに、どれほどその身の不幸を呪ったことでありましょうか。しかし、それを声に出すことも出来ず、六畳間に伏し、ただ天井ばかりを見つめて過ごす日が何年も続いたのでした。

そんな水野さんがやがて神様の愛を知り、イエス・キリストを救い主として受け入れ、洗礼を受けるようになります。牧師さんが水野さんの家を熱心に何度も訪れて、聖書を懇切丁寧に説き明かしてくれたのだそうです。聖書を学び始めた水野さんは、日増しに明るくなり、顔つきも変わり、いつもニコニコするようになったと言います。そして、水野さんが明るくなると、家中が明るくなったといいます。
この明るさを水野さんの人生にもたらしたのは、病気が軽くなったとか、家族の苦労が減ったということではなく、イエス様を知るということによってでありました。イエス様を知ることによって、自分の身に起こったことも、神様が自分

にくださった特別な人生なのだと受け入れることができるようになったのです。

水野さんが瞬きの詩人と言われるのは、後にお母さんの手助けを得ながら、五十音表を使い、瞬きで自分の意志を表現したり、神様を讃える詩を作ったり出来るようになったからです。そんな水野さんがクリスマスの喜びをうたった詩があります。
一度も高らかに クリスマスを喜ぶ賛美歌を歌ったことがない

一度も声を出して クリスマスを祝うあいさつをしたことがない

一度もカードに メリークリスマスと書いたことがない

だけど 雪と風がたたく部屋で

心の中で歌い 自分自身にあいさつをし

まぶたのうらに書き

救いの御子の降誕を 御神に感謝し喜び祝う

クリスマスとはいえ、教会に行くこともできない、賛美歌を歌うこともできない、メリークリスマスと挨拶することもできない、そんなクリスマスでありました。それにも関わらず、水野さんはクリスマスを喜んでいる。もしかしたら、私たちよりずっと大きな喜びに溢れて、クリスマスを過ごしておられたかもしれません。