園長便り

急ぎすぎない

園長:村沢秀和

子どもたちは、いつも目をらんらんに輝かせています。つぶらな瞳を見ていると、子どもに悪い子は一人もいないといつも思わされます。子どもたちはいったい何を見つめているのでしょう。これからどのように育っていくのでしょう。やがて子どもたちが羽ばたく未来を思うと、身も心も引きしめられます。

私たち大人は子どもに大きな期待をかけることでしょう。しかし、大人の自己中心的な考えを押し付けないように注意したいものです。親の好みの子どもを期待したり、世間の一般基準に合わせて育てようとしたり・・・。また、大人はどうしても子どもに早く大人になることを願ってしまう傾向があります。大人のように考え、行動するようになることが成長だと思うのです。その結果、大切な「子ども時代」を素通りさせてしまうかもしれません。これは子どもの成長にとって、実はとても大きなマイナスだと言われています。

童話作家坪田譲治氏は「人はその幼い日に人生を愛することを学ぶ」と言いました。子ども時代の子どもらしさは、その生涯に大きな意味を持っているのです。大人が絶対まねのできない想像力や好奇心、大人がびっくりするほどの鋭い感性や豊かな観察力を子どもは持っています。そして、それらは子どもらしい自由な遊びの中でこそ育まれるもので、親が選んだ塾や稽古ごとの中では、その大半は花開くことなくしぼんでしまいます。

ある男の子が学校に遅刻してしまいました。家をちゃんと間に合う時間に出たのに、どうして遅刻したのかとたずねると、「道に虫がいたから」と答えたのでした。時間がたつのも忘れて道端にいた虫に夢中になっていたのです。大人は彼を注意することでしょう。でも、その好奇心や集中力はすばらしいものです。そしてこの男の子は、子どもらしい好奇心と集中力から見たものを通して、人生を愛することを学んでいるのです。

小さな子ども時代から、極端に英才教育を施す場合がありますが、それが将来障害となることも少なくありません。心がまだ未熟な状態で知識ばかり詰め込むと、人格全体の成長バランスを崩してしまうことにもなりかねないからです。

親や教師は子どもが自ら好奇心を持って学ぶその時を大切にし、焦って先回りしないように注意しなければなりません。子どもたちは大人たちには見えないものを見ています。大人たちが感じないものを感じています。そして、そのひとつひとつが子どもの成長には欠かせないものなのです。